「あ~、また言えなかった…。変に思われなかったかな…。」「なんであの時にちゃんとできなかったんだろう。マジで最悪…。」過去に失敗してしまったことやうまくできなかったことを思い出し、悔やんだり恥ずかしくなったりする。そして気分は下がり調子は狂い、何をやるにも身が入らなくなってしまう。気付いたらそうなっていることが多いという人は、結構多いんじゃないかと思います。

ただ、そうやって過去の経験やその時のネガティブな感情を思い返すということは、コーチングの観点から考えるとあまり好ましくないことです。そうすることは、過去の状況を脳の中でもう一度経験することになり、つまりその記憶をどんどん強固にしていくということでもあります。そしてそれが強固になればなるほど、今後その記憶と似た状況に遭遇した時に、かえって同じような認識や行動を繰り返しやすくなってしまうのです。その記憶が、自分の一つ一つの認識のパターンや行動のパターンに強く組み込まれていってしまうからです。

認識の仕方で、その後の行動も決まる

上に書いたことは吃音でも全く同じことが言えます。目の前の状況や言おうとしている言葉を「以前言えなかった状況(言葉)と同じ状況(言葉)だ」と無意識のうちに認識してしまうことそのものが、吃音の表出に大きく影響を与えます。その認識の結果として意図せずとも心と身体の両方が言葉につまりやすくなる状態を作ってしまうからです。それは「スムーズに言わないと…」と意識しながらも裏返しとして言葉につまってしまうことを意識している状態であり、身体は緊張しうまく動きにくくなっているという状態ですそして、過去の吃音が関わる記憶やそれに伴うネガティブな感情が強固になればなるほど、上の認識は生じやすくなります。だからこそ吃音を変えるという観点から考えた時も、吃音に関連する過去の経験やその時のネガティブな感情を思い返すという癖は修正していった方がいいと言えます。

ただ、「それはわかっているんですが、なかなかそうできなくて…」と思う人も多いはずです。不安や恐怖、後悔といったネガティブな感情は、脳の機能として理性的な思考を抑えるように働いてしまうからです。一度その感情が浮き出てくるとそれにのみ込まれてしまい、にっちもさっちもいかなくなる、なんてことにもなりやすいんですね。ですがだからといって思い返す癖を修正することができないのかというと、そんなことはありません。いくらその過去の経験が大きなものであろうと、いくらその感情にのみ込まれてしまうと感じようと、その経験も感情もあくまで自分の脳であり心の中で起きていることだからです。

自分の外側ではなく、自分の内側で起きている

『過去の経験』『ネガティブな感情』という得体の知れない何かが自分の外側にいて、その何かが自分にいろんな悪さをしている。そういう風に考えてしまうかもしれませんが決してそうではありません。その何かは自分の外側ではなく自分の内側で起きていることです。自分の内側で起きているのであれば、言い換えれば自分の脳と心の中で生じているものであれば、自分で制御できない道理はないはずです。

もちろん「じゃあそれをどうやるの?」についてはまた別な話ではありますが、自分の脳と心の中で生じているものに過ぎない、自分の内側で起きていることだ、のように考えるだけでも、「じゃあコントロールできるかも…」とネガティブな感情に対する印象も少し変わってくると思います。実際、思い返してネガティブな感情を感じた時に、「まあでも、この感情も脳と心の中で生じているものなんだよな…」のような視点で、あくまでもコントロール権は自分が握っているんだという視点でその感情を捉えてみることで、少し冷静な気持ちで客観的に観れるようになるはずです。

そして重要なことは過去の経験やネガティブな感情を思い返すことではありません、次に同じような状況になった時にどうするのか、すでに吃音を変えた自分ならどのようにコミュニケーションするのか、これから自分はどうありたいのかといった、望ましい自分自身のイメージやその時に感じるポジティブな感情を繰り返し思い描くことです。当たり前のように言葉を話し、コミュニケーションを楽しむ自分。そんな自分はどのような価値観を持ち、どのようなことに意識を向け、どんな気持ちを感じているでしょうか。その自分自身を『今』明確にし、『今』リアルにイメージしていくこと。そうすることが、その望ましい自分へと変わっていくことにつながり、結果として吃音の状態を変えることにもつながっていきます。

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