人は、ありのままの真実に基づいて認識し行動を起こすのではなく、自分が真実だと考えている信念(Belief)によって認識し行動を決めている。

私が学んできたコーチングの中でも特に重要となる人の脳と心の働きを表した一文です。人は五感を通じて、自分の目の前に広がっている現実を認識します。ただその時に目の前の現実をありのままに認識しているかというとそうではなくて、実はかなりバイアスがかかった(をかけた)形で認識している。

記憶の状態が目の前の現実を決める

例えば会社で『エクセルで資料を作成する』という全く同じ仕事をしているにも関わらず、「マジだるいし。早く帰りたい」と思ってやる気なく仕事をしている人もいれば、「よし、じゃあ次はこれやって、これが終わったらあれやって…」とやりがいを感じながら仕事をしている人もいると思います。もし仮に「エクセルで資料を作成する」という目の前の現実を、一人一人がありのままに認識しているのであればこのような違いは出てこないはずですが、実際はなかなかそうはなりません。

人は五感から脳へ伝達された情報とこれまでの経験で蓄積した記憶とを照合することで、はじめて目の前の現実を認識することができます。そしてその照合する記憶には、自分にとってどのような意味を持つのかといった何らかの重み付けがされています。だから目の前の現実に対して「これは好き」とか「これはイヤだ」とか「これは楽しい」といった評価ができる。その伝で上の例を考えてみるのなら『エクセルで資料を作成する』ということに対して、どのような記憶を元にどのように評価したかが人によって違うから、結果として現れる取り組みの姿勢にも違いが生じたということです。

これは仕事以外でもありとあらゆることに言えて、全く同じものごとや同じ状況であったとしてもそのものごとや状況に対して抱く印象は一人一人大きく違ってきます。どのようなことを経験しその経験からどのように記憶を形作ってきたかということは、当たり前ですが一人一人大きく違うからです。そしてその一つ一つの記憶が組み合わさってその人なりの好き嫌いや価値観、冒頭で書いた信念(Belief)といったものが作られていくのです。

とらわれを減らしていく

吃音を持っている人で、自分がどのように言葉を発しているのか、発していたのかをとても気にしてしまうという人は多いと思います。吃音を持たない人からしてみれば「ん?普通だったけど、なんか気になることあった?」というようなちょっとした言葉のつまりや乱れも、「あ、やばい、今つまった。話の流れが少し止まったかも…。どうにかして持ち直さないと…。」と気になり焦ってしまう。そして会話が終わった後も「あ~、またダメだった。絶対変に思われてるし…」と、その会話での自分の話し方をダメだったこととして認識してしまいます。そうしてしまう理由を上に書いた内容から考えるのであれば、これまでの『言葉につまった』という経験に対して「ダメなこと」「イヤなこと」「今後避けないといけないこと」とネガティブな評価・情動を重ねて記憶しているからだといえます。だからこそその人にとって『どのように言葉を発しどのように話すか』はとても重要なことになり、「言葉につまってしまってはいけない」というような強い価値観を抱くようになる。

私自身も以前はそうだったのでその気持ちは手に取るようにわかります。ただその状態のままでは吃音をなかなか変えられないことも多いのです。吃音が変わっていく時に起こること。それは吃音へのとらわれが減っていくことです。これまで吃音を意識していた場面であったとしても「なんとかできるかな」と思えるようになってくるのです。それは言い換えれば、『言葉につまった』という経験の記憶が持つ意味合いが変わっていくからだということでもあります。逆に、らわれが減っていかないことにはなかなか吃音は変わりづらい。吃音を意識する結果として余計に身体が緊張しかえって言葉につまりやすい状態になってしまい、その経験がとらわれをさらに助長するように働いてしまいがちだからです。

真実だと考えている信念は必ず変えられる

そのとらわれを減らしていく前提として大切なこと。それは記憶に持たせている意味合いや、目の前の現実をどのような記憶と照合しどのように評価するのかといった一連の流れはかなり動的なものだということです。冒頭の例で出てきた仕事に身が入らない社会人の人も、例えば家族を持ったりすることで「俺がもっとしっかりしないと」と思うようになり、急に仕事に精を出し始めるなんてことはよくあることのようにです。仕事に身が入らなかった時と仕事に精を出し始めた時。その違いはどこにあるかというと、当人が『その仕事に持たせている意味』にあると言えます。前者は「お金を稼ぐだけのやりたくもないこと」のような感じで、後者は「家族を守るために必要なこと」のような感じです。

実は記憶に持たせている意味合いや、どのような記憶と照合しどのように評価するのかといった一連の流れを変えていくこと、言い換えれば目の前の現実に持たせる意味を変えていくことはコーチングで自己変革していくことの一つの本質でもあるのです(コーチングを実践していく事でそれが結果として起きていく、というのが正確なところです)。そのために行っていくことはたくさんあるものの最も大切なことは、これまで自分が意識していたことよりも遥かに大きくて、遥かに大きな重みがある別の『何か』を心に宿していくことです。コーチングの言葉ではそれを『ゴール』と呼びます。もっと意識を注げるゴールを設定し、そこにどんどん意識を注ぎ行動していくことで自分も現実も変わっていくのです。

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2 件のコメント

  • 初めまして。
    24歳の草野と申します。
    現在会社員をしておりますが、吃音があり思うように仕事ができず
    悩んでいて、今日東さんのブログを見つけ勇気付けられました。
    いきなりですが、一度お会いしていろいろお話を聞いてみたいと
    思っております。
    もしよろしければメール下さい。
    よろしくお願いいたします。

    • 草野さん

      コメントありがとうございます。
      先ほどメールをお送りしましたので、ご確認ください。

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