例えば何かに対しての悩みやコンプレックスを抱えているとき。ちょっと好奇心がそそられることがあったとしても「でも私は◯◯だから…」「俺の今の状況じゃちょっと…」と、その悩みが心理的な制限の役割を果たして自分自身の行動を抑えてしまう、という時は少なくないと思います。そして自分の行動を抑えてしまうたびに「これさえなければ自分はもっと楽しめるのに‥」といった言葉が心の中に浮かんでいる。

私自身吃音で悩んでいたころは上に書いたようなことをよく考えていました。「うまく喋れないから人付き合いがおっくう。」「たぶんこの集まりでは自己紹介があるだろうな。…やっぱり今回のお誘いは断ろう。」吃音でうまく喋れないがためにいろんなことがやれない、いろんなことができないと思っていた。そして同時に吃音さえ変えてしまえば、うまく喋れるようになれば、いろんなことがやれていろんなことができるようになるとも思っていた。自分はうまく喋れないという悩みがあらゆる方面で自分を縛るように作用していました。

悩みであるということを疑う

「これさえなければあれもできるしこれもできる」その思いはとても強いものだと思いますが、そこであえて、「本当にそうなのかな?」と考えてみると、これまで気付いていなかったようなことが見えてくることがあるんですね。本当にその悩みは自分を大きく制限しているのか。本当にその悩みがなかったらいろんなことがうまくいくのか。そういう視点でちょっと冷静に眺めてみる。

例えば私の例で言うと「吃音がある→人付き合いが苦手」というような法則を、心の中に作り出していたことは上に書いた通りです。ただ冷静に考えてみると「それ本当に?」と言えることがわかると思います。たとえ吃音がある人でも人付き合いを楽しめている人は大勢いるはずですし、たとえ吃音がない人でも人付き合いが苦手だと感じる人は大勢いるはずだからです。当時の私にとっては「吃音がある→人付き合いが苦手」というのは、何の疑いもないものとして存在していました。ただ上に書いたようにそれはあくまでも『私にとって』というものであり、実際はいくらでもツッコミようのあるものだった。

そしてより細かく考えていくと、「吃音がある→うまく喋れないことで人に変に思われる→人に変に思われることがイヤだ→それを避けたい→人付き合いを苦手に感じる」というのが私の中での本音の気持ちでした。私が抱いていた『人付き合いが苦手』という感覚はうまく喋れないからということそのものよりも、人に変に思われることを避けるようとするがために感じていたものでした。

今見えていないものを、見ようとする

あくまでも私の一例ですが、その他のいろんな悩みについても同じようなことが言えることは多いのです。悩みとして意識に上がっているものは実は表面的なものであり、その悩みの奥に別の要因が隠れている。その奥に隠れているものの方が自分に大きな影響を及ぼしていたりする。そしてその奥底にあるものに対してアプローチしていくことで、はるかに簡単に表面的な悩みも解決されたりします。

私の場合で言うと、コーチングの理論を実践しそしてプロのコーチの方からコーチングを実際に受け、自信を持てるようになり「自分がどんな人間であるかは自分が決める」と思えるようになっていったことで人付き合いへの苦手意識は大きく減っていきました。『自分が自分のことをどう思っているのか』を大切にすることで、『相手が自分のことをどう思うのか』ということへの重要度が下がっていったのです。それが副次的に吃音そのものを変えていくことにも大きな影響を与えていきました。うまく喋れるか喋れないかというのはその時の心の状態に大きく左右されますが、特に『恐怖』が大きな要素の一つになります。そして私にとっては人に変に思われてしまうことへの恐怖が、私の心の状態に大きな影響を与えていたんですね。

悩みの奥にあるものに気付くためには、「これさえなければあれもできるしこれもできる」のように盲目的に思っている状態ではなかなか難しいのです。その悩みに対する重要度の高さがコーチングの言葉でいうところのスコトーマ(心理的な盲点)を生み出し、それ以外のことを見えにくくさせてしまうからです。そういう状態から一旦離れる上でそれが悩みであるということを敢えて疑ってみる。そうすることで自分の中で幅を利かせている悩みを落ち着いて眺めてみたり、より細かい要素に分解してみたりということがやりやすくなります。

自分が今抱えている悩みに対して、あえて「本当にそう?」と考えてみること。そうすることで見えてくる新しい気付きや発見。その気付きや発見は悩みの大きさや重さを下げていく手助けとなっていきます。そして何より、その『経験』そのものやそこで得られた『体感』そのもの。それらが自分の今の状態を変え、前に進んでいくためにとても大切なものとなります。

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