人は目の前の状況の中で、自分が重要だと思うものだけを見ようとする。コーチングの理論の中で語られる様々な概念の中でもとてもコアなものとなる、脳と心の働きを表した一文です。

この時の『重要』というのはもっとわかりやすく言うと、「他のものよりも特別に思っている状態」だと捉えてもらうといいと思います。そしてその「特別」には、プラスの方向性はもちろんマイナスの方向性も含まれます。

例えば「好き」と「嫌い」は全く違う感情ですが、「興味がない」という状態よりはどちらも「特別」だと言えます。その「特別」の振れ方の違いで、「好き」なることもあれば「嫌い」になることもある。

そして一人一人が持つ『重要性』、言い換えれば「何を特別に思って何を特別に思わないか」が違うから、ある同じものや人に対して「好き」と感じる人もいれば「嫌い」と感じる人もいるし、「かわいい」と感じる人もいれば「う、うん…」と感じる人もいます。

誰もが目の前の状況のありのままを同じ様に認識している、と思ってしまいがちですが、実はそうではないんですよね。一人一人がそれぞれ持つフィルターの様なものを通して、一人一人違う形で目の前の状況や物事を認識しているのです。

(そのフィルターのことをコーチングでは『RAS(Reticular Activating System』という言葉で説明します)

それは言い換えれば、認識は常に双方向性を持つという事。目の前の状況や物事といった外側にある情報と、自分の内側のフィルターの状態が互いに影響し合った結果として、「好き」とか「おもしろい」とか「またやりたい」といった認識が生まれてくる。

そしてその事を知っておくだけで、日常の様々な状況においてよりしなやかに、より落ち着いて過ごしやすくなります。

例えば人間関係。誰かとのコミュニケーションの中で、なんかイライラして不満を感じたりと心がざわつく。そういう時はその心のざわつきの原因を、多くの場合コミュニケーションの相手だけに求めてしまいがちです。

ですが上に書いた様にその心のざわつきは、相手の何らかの行動を自分のフィルターを通して認識した結果として生まれたものです。「相手の行動」だけが原因ではなく、実は「自分」もそこでしっかり一役買っています。

例えば「イライラ」という感情は、「何でこいつはいつもこうなんだ…。」という風に感じている時だと思います。そしてそれは少し掘り下げると、「Aの様な時はBをすべき」という様な、自分なりの価値基準や判断基準があって、相手がその基準に反する行動を取っていると思えたから生じたものだと言えます。

そしてこの時もし仮に自分が、「Aという場合はBでもCでもDでもいい」という様なある程度緩やかな基準を持っていて、相手の行動がDに合致するものであったのなら、イライラを感じる事はなかったはずです。自分が望ましいと思える行動を相手は取っているので、わざわざ情動を生じさせイライラする必要がないからです。

そしてこういった事を知るだけで、例えば心がざわついたとしても「あ、俺はこういう風に考えているから、今イライラしてるんだ」と、そのざわつきをフッと離れて外側から観やすくなります。その上でそのざわつきが正当なものだと思えれば、改善する様に相手にそれとなく伝えてもいいですし、要らないものだと思えれば「このイライラは要らなくない?」と修正してもいい。

他人と関わる中で感じる様々な感情や思いは、見方を変えれば、自分がどんな事をどの様な形で重要だと思っているのかを見出す材料にする事ができます。よく言われる「他人は自分を映す鏡」ですね。

私自身コーチングを学び実践する中でここまで書いてきた様な事が理解できてから、人間関係に限らず何かや誰かへのネガティブな感情にとらわれる機会がすごく減りました。

そういった感情を感じたとしてもその対象ばかりを見ようとするのではなく、「俺の中の何かの重要性に引っかかったからなんだよな」と率先して自分を振り返る様になっていった。そしてそうできていった事で、より冷静にその物事や状況を観れる様になり、ネガティブな感情にとらわれる事がどんどん減っていく様になりました。

人は目の前の状況の中で、自分が重要だと思うものだけを見ようとする。

この一文を意識しながら日常を過ごしてみると、人間関係はもちろん、それだけに限らず様々な気付きがあります。自分は今どんな事を重要だと思っていて、どんな事を特別だと思っているのか。それが観えてきだすと、日常での様々な物事の見え方は大きく変わっていくはずです。

 

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