今でもたまに言葉に詰まる事もあるけれど、その事をネガティブに感じていないし、とらわれる事もない。だから私は今は吃音に悩むという事はない。前回の記事で「今現在吃音に悩む事はあるのか?」という質問に対しての回答を書きました。そしてそうなった理由として、コーチングを実践(セルフコーチングを実践)し、そして実際にコーチングを受ける事で私自身の内面が変化がしていったから、という事も書きました。

吃音に悩む自分、吃音に悩まない自分

2017.01.17

コーチングを実践 → 内面が変化 → 吃音に悩む事がなくなった

シンプルに言うとこうなるわけですが、これだけを見ても「なんでそうなるの?」と思われる方も多いと思います。という事で今回は、上記の図式をもう少し細かく見ていこうと思います。

今の自分を変える必要性は、ゴールから生まれる

まず『コーチングを実践 → 内面が変化』の部分について。コーチングを実践する中で最も重要な事の一つとして『ゴール設定』があります。このブログでもこれまでお伝えしてきていますが、ゴールとは将来の自分の望ましい姿や、その自分が成し遂げている物事や状況の事。そしてゴールを設定する時には、以下の二つの約束事を踏まえます。

①今の自分のままではまず達成できないものや、どうすれば達成できるのかほとんどわからない様なものである事
②「このゴールを達成したい」と迷いなく思えるものや、人から止められても「達成したい」と思えるものである事

コーチングを実践するという事は、そのゴールへ向かって、実際に自分自身や自分を取り巻く周囲の状況を変えていくという事でもあります。言い換えれば、上の約束事を基に設定したゴールを現実のものとするために、徹底的に自分自身を変え、成長させていくという事です。

誤解を恐れずに言うのなら、これはそんなに簡単な事ではありません。「自分はあんまり変わりたくない、だから周りが変わってほしい」というスタンスでは、ゴールを現実のものとできる可能性は限りなく低いままでしょう。だからこそコーチングの理論の中では、ゴールへ向かっていく事をサポートするための考え方や知識が説明されていますし、コーチが第三者にコーチングを提供する意味や理由もここにあるんですね。

そして「自分を変える」という事をもう少し細かく見ていくと、物事や状況を認識する際の価値基準や判断基準を変えていく事が、その要素の一つとしてあります。上に書いた、ゴールを設定する時の約束事から考えると当然の帰結ですが、これまでと同じ様な行動を取っている様では、設定したゴールは現実にはならないと言えます。だからこそ、そのために行動もしっかりと変えていく事が重要になる。

そしてその「これまでとは違う行動」を取る事が当たり前になる様にするために、コーチングを実践する中ではまず自分自身のイメージ、言い換えれば内面を変えていきます。「内面」をもう少し具体的に言うと「物事の考え方や捉え方」と言えますし、さらに細かく言うと「価値基準」「判断基準」となります。その「価値基準」「判断基準」が変わるからこそ、行動も自然と変わっていくのです。自分が取る一つ一つの行動は、一瞬一瞬の目の前の状況を自分がどの様な価値基準・評価基準で認識したかで決まってくるからです。

嫌だから、悩みになる

次に、冒頭に書いた『内面が変化 → 吃音に悩む事がなくなった』という事について。まず、「なぜ悩むのか?」という事を考えてみると、これは色々な分析はできるかもしれませんが、すごくシンプルに考えると以下の三つの要素があるからだと思います。

①言葉に詰まる事が嫌だと感じる
②①がこれからも継続していくと思っている
③解決策がわからない

言葉に詰まる事を嫌だと感じない、ストレスに感じないのであれば(その様な方はそうそういないとは思いますが)悩みだと思うはずがないですし、それが一時的なものだとわかっているのなら時間が過ぎるのを待てばいいでしょう。そしてもし解決策がわかっているのなら、そのための行動を起こせばいいだけです。

そしてさらに言うと、これら三つの要素の中で最も根本にあるのは①だと言えます。もし①がなくなれば、これから継続しても何の問題もないですし、解決しないといけない理由もなくなるからです。

では「何で嫌なのか?」と考えると、それはこれまで「言葉が詰まる」という事が原因となって様々な不利益を被ってきたから、もうちょっとシンプルに言うと、ネガティブな感情を感じる経験をたくさんしてきたからだと言えます。吃音に関連するネガティブな記憶があるからです。もし、言葉が詰まった時にネガティブな感情を感じた事がこれまで一度もないのなら、嫌だと感じようがありません。

逆向きに考えると、吃音に関連する過去のネガティブな記憶を基に、「言葉に詰まる」という状況を評価した結果として「嫌だ」という感覚が生じた、となります。そしてその「吃音に関連する過去のネガティブな記憶を基に」という事は、言い換えればその記憶が何らかの基準になっているという事。つまりそれが、吃音に関連する過去のネガティブな記憶を基にした価値基準や判断基準となっている、というわけです。

だからこそ、その価値基準や判断基準が変われば「吃音に悩んでいる」という感覚も変わっていくのです。そして先ほども書いた様に、その価値基準や評価基準とは、内面と呼ばれるものの一部です。よって、内面を変えていく事で吃音を悩みに思わなくなっていく、という事が起こります。

目の前の状況を「以前の言葉に詰まった状況と同じだ」と認識する

さらにその結果として、「言葉に詰まる」という事そのものも減っていきます。過去の記事でも書いてきた様に、今の目の前の状況を「以前言葉に詰まった時と同じ様な状況だ」と無意識で認識してしまう事が、脳・心・身体が言葉に詰まりやすい状態になる事を促してしまいます。

「以前言葉に詰まった時と同じ様な状況だ」と認識した結果として、「また言葉に詰まって嫌な思いをする可能性が高い」という事が十分想定され、意識・無意識のどちらとしてもそうなる事は避けたいわけです。だからこそ必要以上に「言葉を発する」という事に意識を向けてしまう。「言葉に詰まってまた嫌な思いをする」という事を避けようとするが故です。

ですが、そうする事が意図せずとも逆向きに働いてしまい、かえって言葉に詰まりやすい状態を作ってしまうんですね。無意識の内に、頭の中には言葉に詰まってしまった時の自分がイメージされ、鼓動は高まり身体のいろんなところが緊張してしまう。「吃音を考えちゃうともうダメですね」「気付いたらスムーズに喋っていたという時があります」という事を言われる方は結構多いと思いますが、そのカラクリはこの様な事があると考えられるのです。

その様な認識の流れを変えようとする時、考え方はいくつかあるとは思いますが、言葉に詰まる事へ感じるネガティブさの度合いを下げていく事が重要になります。嫌だからこそ、同じ状況であると認識しやすくなるなら、その嫌さの度合いが下がれば認識しにくくなるからです。

そしてそのネガティブさの度合いが何で決まるかというと、吃音に関連する過去のネガティブな記憶です。上述の通り、それは価値基準や判断基準の基になるものでもあります。つまり、価値基準や判断基準が変わる事で、言葉に詰まる事へ感じるネガティブさの度合いも下がっていき、無意識で「以前言葉に詰まった時と同じ様な状況だ」と認識する頻度も減っていくから、言葉に詰まる事そのものも減っていくというわけです。

 

ここまで書いてきた事を私自身の経験に当てはめるのなら、まだ吃音で悩んでいた頃に私が設定したゴールは、「コーチとして活動していく」というものでした。今冷静に眺めてみると色々とツッコミどころがあるものではありますが、当時の私にとっては、上に書いたゴール設定の約束事を十分満たすものでした。

そして「コーチとして活動している自分」へと成長していこうとするためには、「吃音に悩んでいる自分」を変える必要性があったのです。コーチとしてクライアントにコーチングを行なっている自身を想定した時、「スムーズに喋らないと…」という事を気にしながらクライアントに接している様では、コーチングを効果的に行えるはずがないからです。端的に言うと「そんなではコーチとしてありえないから」と思ったわけです。ゴール側の私自身のイメージと吃音で悩む私自身は排他的であり、整合的に考えようがないものだった。

そしてもちろん、私にとっては「コーチとして活動している自分」の方が大切でした。だからこそその自分へと成長していくために、強いイメージを作っていき、そのイメージに従いこれまでやった事がなかった様な行動も起こしていった。そうやって「自分を成長させる」という過程でのあらゆる事を経験していく中で、内面がどんどん変化していき、結果として吃音で悩むという事も減っていった。

実際のところ、当時はここまで明確な理解があったわけではなく、ただただ「コーチとして活動している自分」へと成長していこうとしていただけ、というところが正直なところなのですが、そうする事が結果として、吃音で悩む私自身を変えていく事にもなったのです。

 

なぜ吃音に悩まない状態になっていくのか。ここまで書いてきた事をご自身に当てはめて考えてみてもらうと、きっとわかりやすいのではないかと思います。

 

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2 件のコメント

  • ゴール設定の条件として
    「今の自分のままではまず達成できないものや、どうすれば達成できるのかほとんどわからない様なものである事」
    と書かれていますが、達成する方法が分からなければ挫折する可能性があると思います。
    そのため達成可能な目標を積み上げるべきではないかと思います。さらに、それを実際に達成することよって自信が身につくと思いますが、これについて東さんのご意見をお聞かせください。

    • Kosukeさん

      コメントありがとうございます。
      頂いたご質問、とても本質的なものだと思います。

      まず最初にご質問にお答えするのであれば、「方法は最初はわからなくても、ゴールへ近づく内に見えてくるので大丈夫です」となります。

      kosukeさんが言われる通り、記事に書いた約束事を基にゴールを設定した当初は、達成する方法はわかりません。ですのでそれがそのままの状態であれば、確かに「挫折する」という事も起こりやすいと言えますね。

      ただ実際にコーチングを実践する中では、ゴール設定の後に行なっていく事ももっとたくさんあります。それらをすごくシンプルに言うと、心のイメージの中にある「ゴールを達成している自分」をより確かなものにしていく、という事を行なっていきます(そういった作業をコーチングでは「アファメーション」と言います)。

      そしてその強いイメージに促される形で、具体的な行動も起こしていきます。確かにその段階ではゴールの達成方法はわからないかもしれませんが、その段階でできる事でゴールに関係する事は必ずあると思うんですね。まずはそういった事からやっていきます。

      そしてそうやって、ゴールへ向かってイメージを強めながら行動を起こしていくという事を繰り返していくと、当然自分自身も様々な事を経験し、学び、成長していく事になります。言い換えると、ゴールにどんどん近づいていく。

      すると徐々にではありますが、ゴールを設定した当初は認識できなかった物事を、認識できる様になっていくんですね(コーチングの言葉では、RASが変わりスコトーマが外れていく、と言ったりします)。その中に、ゴールへ近づくための新しいやり方なんかも含まれてきます。

      ですので「方法は最初はわからなくても、ゴールへ近づく内に見えてくるので大丈夫です」というお答えとなります。

      そして上にも書いた様に、ゴールを設定すれば万事OKというわけではなく、最終的には具体的な行動も日々起こしていきます。行動を起こす中で様々なフィードバックが得られると思いますが、当然その中にポジティブに評価できるもの、いわゆる「成功体験」と見なせるものもたくさん出てきます。

      よって、ゴールへ向かってイメージを強めながら行動を起こしていく、という事を繰り返していく事で、結果として自然と「自信」も付いてきますね。

      Kosukeさんの参考になると幸いです。

      東輝弥

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